Japanische Klassiker mit Furigana
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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
Lesen Sie 尾崎士郎短篇集 (あきかぜとはは) von 尾崎 士郎 (おざきしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.032 Zeichen · 216 Bildschirme
南里君はそう考えることに少しの不安も感じなかった。
「兎に角、ひどいことをしたもんですね。そう言えば、今日わたしがくるとき巣のまわりを鶺鴒がしきりに飛んでいましたよ」
そう言った瀬川君の言葉に対して南里君は平然としてこう答えた。
「鶺鴒はもう少し人通りの多いところへ巣をつくればよかったわけですね。蛇より人間の方がどんな場合でも道徳的だと考えたところに鶺鴒の錯誤があったわけだ!」
日暮れがた、南里君は瀬川君をおくり旁々鶺鴒の巣を見に行った。陽がかげって、大気が夕靄のためにうすじめっているので水の音に秋を感じた。
巣のある場所の近くまでくると、足音におどろいたのか、一羽の鶺鴒が、もう一つ上の岩角へひょいととびあがって、軽く全身を弾むように動かせながら、不安そうに二人を眺めていた。瀬川君は巣に近づいて、じっと中をのぞきこんでいたが、急に頓狂な声で叫んだ。
「一つしかいない。一つしか。――さっきまでたしかに二ついたんだが」
南里君はぎくりとした。してみると、誰れか自分のあとから、もう一つ盗んだ奴があるにちがいない。南里君は急に不安になった。ことによると、その男は自分の盗むところをこっそり見ていたのかも知れない。