Japanische Klassiker mit Furigana
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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
Lesen Sie 尾崎士郎短篇集 (あきかぜとはは) von 尾崎 士郎 (おざきしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.032 Zeichen · 216 Bildschirme
そして、その男は、おれがとらなくともどうせ誰れかがとるのだ、それにあの男がとった以上はおれがとったって差支ない筈だ。――見知らないその男はそう考えることによっておれに罪をなすりつけるつもりでとったのかも知れない。南里君は一瞬間、道徳的な感情の方へ引き戻されたが、すぐ猛然として跳ねっ返った。――誰れも見ていなかった。あのときはたしかに誰れも見てはいなかった。おれはこんな幻覚におびえてはいけない。
南里君は、しかし、鶺鴒の親の悲しげな視線をうしろに感じながら、そこの曲り角から自分の宿へ帰ってゆく瀬川君とわかれて暮れかかった道を歩いていった。歩きながら、彼はこの村へ来てから知り合いになった一人の娘のことを考えていた。彼女は南里君の泊っている宿からあまり遠くない街道筋にある古い寺のひとり娘で、父と母が死んでしまって、おじいさんとおばあさんとだけに養われている。そのおじいさんと南里君とは将棋の友だちなので、彼は毎晩のように寺へ出かける。ありていに言えば、実は将棋よりも娘の方が目当なのだ。彼女は今年十五歳であるが、身体つきの子供らしいにもかかわらずその瞳の底には成熟した女の嬌羞が潜んでいる。