Japanische Klassiker mit Furigana
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ひゃくものがたり
山椒大夫・高瀬舟
Lesen Sie 山椒大夫・高瀬舟 (ひゃくものがたり) von Mori Ōgai (森 鴎外) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 45.466 Zeichen · 92 Bildschirme
その時、山本平作方へ突然尋ねて来た男がある。この男は近江国浅井郡の産で、少い時に江戸に出て、諸家に仲間奉公をしているうちに、丁度亀蔵と一しょに酒井家の表小使をして、三右衛門には世話になったこともあるので、若しお役に立つようなら、幸今は酒井家から暇を取っているから、敵の見識人として附いて行っても好いと云うのである。名は文吉と云って、四十二歳になる。体は丈夫で、渡者の仲間には珍らしい、実直なものだと云うことが、一目見て分かった。
九郎右衛門が会って話をして見て、すぐに宇平の家来に召し抱えることにした。
九郎右衛門、宇平、文吉の三人は二十九日に菩提所遍立寺から出立することに極めて、前日に浜町の山本平作方を引き払って、寺へ往った。そこへは病気のまだ好くならぬ未亡人の外、りよを始、親戚一同が集まって来て、先ず墓参をして、それから離別の盃を酌み交した。住持はその席へ蕎麦を出して、「これは手討のらん切でございます」と、茶番めいた口上を言った。親戚は笑い興じて、只一人打ち萎れているりよを促し立てて帰った。
寺に一夜寝て、二十九日の朝三人は旅に立った。文吉は荷物を負って一歩跡を附いて行く。