Japanische Klassiker mit Furigana
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へいぼん
平凡・私は懐疑派だ
二葉亭 四迷
Lesen Sie 平凡・私は懐疑派だ (へいぼん) von 二葉亭 四迷 (ふたばていしめい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 81.548 Zeichen · 161 Bildschirme
胸を轟かして、狼狽てて封を切って見ると、「父危篤直戻れ」だ。之を読むと私はわなわなと震え出した。卒然下宿を飛出して、血眼になって奔走して、辛うじて聊かの金を手に入れたから、下宿へも帰らず、其足で直ぐ東京を発って、汽車の幾時間を藻掻き通して、国へ着いたのは其晩八時頃であった。
停車場で車をって家へ急ぐ途中も、何だか気が燥って、何事も落着いて考えられなかったが、片々の思想が頭の中で狂い廻る中でも、唯息のある中に一目父に逢いたい逢いたいと其ばかりを祈っていた。時々ふッと既う駄目だろうと思うと、錐でも刺されたように、急に胸がキリキリと痛む。何とも言えず苦しい。馴染の町々を通っても、何処を如何車が走るのか分らない。唯車上で身を揉んで、無暗に車夫を急立てた。車夫が何だか腹を立てて言ったが、何を言っているのか、分らない。唯無暗に急立てるばかりだ。
漸くの想で家へ着くと、狼狽てて車を飛降りて、車賃も払ったか、払わなかったか、卒然門内へ駆込んで格子戸を引明けると、パッと灯火が射して、其光の中に人影がチラチラと見え、家内は何だか取込んでいて話声が譟然と聞える中で、誰だか作さん――私の名だ――作さんが着いた、作さんが、と喚く。