Japanische Klassiker mit Furigana
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いくどめかのさいご
幾度目かの最期
久坂 葉子
Lesen Sie 幾度目かの最期 (いくどめかのさいご) von 久坂 葉子 (くさかようこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 59.103 Zeichen · 121 Bildschirme
人影はそう云って、にこりっともしないでかけ降りて行ってしまう。ある時は、私が先に通らせてもらうこともある。私が下で待つ場合もある。又私が上ってしまうまで上で待ってくれる時もある。その時は、飛ぶような勢いで上り、「有難う」と私は息をはずませていう。
毎朝きまって私と人影は石段で会うことになっていた。それは、むこうにとっては偶然だったかも知れない。けれども私にとっては、どうしても会わなければならないと思うのだった。石段の中間で体と体がすれ合う時、私は相手の瞳をじっと見る。然し、人影は私にまなざし一つかけてくれるではなく、行ってしまうのだ。何度それがくりかえされたであろうか。四月の半ば頃から六月頃まで、そうして毎朝すぎて行った。くっきり晴れた、そして白い雲のぽかぽか浮んでいる日もある。川の水が増す雨の日もある。その時はどうしても傘をつぼめなければならない。そして人影のもつ大きな黒いこうもりの半分つぼめたその先っちょよりつたう雫が私のおさげの襟元に流れこむこともある。それは冷たいと感じるより何か大きな快感であったのだ。
十六の小娘はこうして人影に恋を感じた。