Japanische Klassiker mit Furigana
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こころのめ
心の芽
小川 未明
Lesen Sie 心の芽 (こころのめ) von 小川 未明 (おがわみめい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.922 Zeichen · 10 Bildschirme
大空の雲の色は、柔らかに、吹く風も暖かでした。どこからか、きりの花の甘い香いが流れてきました。あちらにある物置の軒端へ、すずめが巣を造るとみえ、たえず往来していたが、飛んでくるすずめは、わらくずや、糸きれのようなものを食べていて、彼らは、壁板の壊れた穴から、出たり、はいったりしていました。
「もう、田舎も春だろうな。」と、正吉は、紫色を帯びて、かすみたつ空を仰ぎました。考えるともなく、子供の時分が、頭の中へよみがえったのであります。
かげろうの上る、かがやかしい田畑や、若草の芽ぐむ往来や、隣家の垣根に咲く桃の花や、いろいろの景色が浮かんで、なつかしい思い出にふけると、あのきれいな鳥が田圃の中のかきの木にきて止まったのが、まだ昨日のことであるように、いきいきと思い返されるのです。
「あの後は、町の鳥屋でも、あんな鳥を二度と見たことがない。なんという名の鳥だったろうな。」
彼は、いまでも世界のどこかに、同じ鳥がすんでいるだろうとは思いながら、なんとなしに、またと見られぬようなはかなさを感ずるのでした。そして、そのため自分は木から落ち、びっことなったにかかわらず、その苦痛は忘れられて、ただ美しい鳥に対し、限りないいとしさと悲しみがつのるばかりでした。