Japanische Klassiker mit Furigana
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おもいだすことなど
思い出す事など
Lesen Sie 思い出す事など (おもいだすことなど) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 57.003 Zeichen · 113 Bildschirme
二十八
心を刺戟する力は充分ある。大患に罹った余は、親の厄介になった子供の時以来久しぶりで始めてこの精神生活の光に浴した。けれどもそれはわずか一二カ月の中であった。病が癒るに伴れ、自己がしだいに実世間に押し出されるに伴れ、こう云う議論を公けにして得意なオイッケンを羨やまずにはいられなくなって来た。
二十八
学校を出た当時小石川のある寺に下宿をしていた事がある。そこの和尚は内職に身の上判断をやるので、薄暗い玄関の次の間に、算木と筮竹を見るのが常であった。固より看板をかけての公表な商買でなかったせいか、占を頼に来るものは多くて日に四五人、少ない時はまるで筮竹を揉む音さえ聞えない夜もあった。易断に重きを置かない余は、固よりこの道において和尚と無縁の姿であったから、ただ折々襖越しに、和尚の、そりゃ当人の望み通りにした方が好うがすななどと云う縁談に関する助言を耳に挟さむくらいなもので、面と向き合っては互に何も語らずに久しく過ぎた。
ある時何かのついでに、話がつい人相とか方位とか云う和尚の縄張り内に摺り込んだので、冗談半分私の未来はどうでしょうと聞いて見たら、和尚は眼を据えて余の顔をじっと眺めた後で、大して悪い事もありませんなと答えた。