Japanische Klassiker mit Furigana
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おもいちがいものがたり
思い違い物語
山本 周五郎
Lesen Sie 思い違い物語 (おもいちがいものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 44.840 Zeichen · 88 Bildschirme
一の五
右衛門は片方の足で廊下を叩きながら絶叫した。
「あかりを持て、曲者だ、あかりを持て、曲者だ油断するな」
格闘者は廊下へ転げ出て来た。
一の五
城代家老の満信文左衛門は温厚な徳人である。思慮綿密、喜怒を色に表わさず、曽て人を叱ったことなく、声をあげて笑わず、沈着寛容、常に春風駘蕩といった人格であった。……今もにこにこしている、肥えているというほどではないが、躯も顔も福ぶくしい、半ば白くなった眉毛が眼の上へかぶさるほど厚く生えている。その眉毛の下の眼が、いかにも柔和に微笑して、泰三の深刻な気持をやわらげているようにみえる。
「私も少しは粗忽でございます。兄が、……御存じかもしれませんが、兄があのとおりおちついておりますから、私まで泰然自若というわけにはまいりません、そこが世の中のむずかしいところだと思うのですが、それにしてもいくら私だって、まさかわけもなく粗忽をするというのではないので、……そうです、例えば先日の夜なかのことなんですが」
泰三は坐りなおした。ふしぎなことにそのようすが津留に似ている、さあ来いとばかり舌に湿りをくれる感じで、精気溌溂たるところまでそっくりにみえる。