Japanische Klassiker mit Furigana
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きょうふのまぼろしへいだんいん
恐怖の幻兵団員
大倉 燁子
Lesen Sie 恐怖の幻兵団員 (きょうふのまぼろしへいだんいん) von 大倉 燁子 (おおくらてるこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.784 Zeichen · 28 Bildschirme
心で父に罪を謝しながら、誓約せずにはいられなかったと云って、ぽろぽろと涙を流しました。
美しい女性は起ち上って、夫に握手を求め、魂をとろかすような微笑を浮べながら真紅な唇を彼の耳にあてて、
『あなたのお仕事は東京へ帰ってから後です。あちらで、またお目にかかりましょうね。それまでは――、さよなら』
親しげにささやくや、さっさと席を起って出て行きました。ジープの走り出す音が聞え、やがてそれが次第に遠ざかって、消えてしまいました。
『合言葉を教えておこう』と云って、士官は一雄の耳に口を寄せました。
そのあとで、こんな注意を与えました。
『いつ、どこで、何国人であっても、それは日本人か中国人か朝鮮人か、あるいはインド人かも知れないが、今教えた合言葉をもって現われる人物があったら、その者の一切の命令に従わなければならぬ』と云うのです。
その日以来、一雄はよくよく注意していると、夫のように誓約書を書かされた人が、他にも大分あるらしいのですが、それはお互いの秘密として胸の奥に納めているので、口に出す人は一人もありませんでした。従って今までの親友も、もうお互いに信じ合うということが出来なくなりました。