Japanische Klassiker mit Furigana
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あるおんな
或る女
有島 武郎
Lesen Sie 或る女 (あるおんな) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 205.655 Zeichen · 406 Bildschirme
二九
それは埃立った、寒い東京の街路を思わせた。けれども部屋の中は暖かだった。葉子は部屋の中が暖かなのか寒いのかさえわからなかった。ただ自分の心が幸福にさびしさに燃えただれているのを知っていた。ただこのままで永遠は過ぎよかし。ただこのままで眠りのような死の淵に陥れよかし。とうとう倉地の心と全く融け合った自分の心を見いだした時、葉子の魂の願いは生きようという事よりも死のうという事だった。葉子はその悲しい願いの中に勇み甘んじておぼれて行った。
二九
この事があってからまたしばらくの間、倉地は葉子とただ二人の孤独に没頭する興味を新しくしたように見えた。そして葉子が家の中をいやが上にも整頓して、倉地のために住み心地のいい巣を造る間に、倉地は天気さえよければ庭に出て、葉子の逍遙を楽しませるために精魂を尽くした。いつ苔香園との話をつけたものか、庭のすみに小さな木戸を作って、その花園の母屋からずっと離れた小逕に通いうる仕掛けをしたりした。二人は時々その木戸をぬけて目立たないように、広々とした苔香園の庭の中をさまよった。店の人たちは二人の心を察するように、なるべく二人から遠ざかるようにつとめてくれた。