Japanische Klassiker mit Furigana
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あるおんな
或る女
有島 武郎
Lesen Sie 或る女 (あるおんな) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 205.655 Zeichen · 406 Bildschirme
いつのまにかじめじめした薄ぎたない狭い通りに来たと思うと、はしなくもいつか古藤と一緒に上がった相模屋の前を通っているのだった。「相模屋」と古めかしい字体で書いた置き行燈の紙までがその時のままですすけていた。葉子は見覚えられているのを恐れるように足早にその前を通りぬけた。
停車場前はすぐそこだった。もう十二時近い秋の日ははなやかに照り満ちて、思ったより数多い群衆が運河にかけ渡したいくつかの橋をにぎやかに往来していた。葉子は自分一人がみんなから振り向いて見られるように思いなした。それがあたりまえの時ならば、どれほど多くの人にじろじろと見られようとも度を失うような葉子ではなかったけれども、たった今いまいましい新聞の記事を見た葉子ではあり、いかにも西洋じみた野暮くさい綿入れを着ている葉子であった。服装に塵ほどでも批点の打ちどころがあると気がひけてならない葉子としては、旅館を出て来たのが悲しいほど後悔された。
葉子はとうとう税関波止場の入り口まで来てしまった。その入り口の小さな煉瓦造りの事務所には、年の若い監視補たちが二重金ぼたんの背広に、海軍帽をかぶって事務を取っていたが、そこに近づく葉子の様子を見ると、きのう上陸した時から葉子を見知っているかのように、その飛び放れて華手造りな姿に目を定めるらしかった。