Japanische Klassiker mit Furigana
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あるおんな
或る女
有島 武郎
Lesen Sie 或る女 (あるおんな) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 205.655 Zeichen · 406 Bildschirme
知らず知らずのうちにどれほど葉子は倉地に食い込み、倉地に食い込まれていたかをしみじみと今さらに思い知った。どうなろうとどうあろうと倉地から離れる事はもうできない。倉地から離れるくらいなら自分はきっと死んで見せる。倉地の胸に歯を立ててその心臓をかみ破ってしまいたいような狂暴な執念が葉子を底知れぬ悲しみへ誘い込んだ。
心の不思議な作用として倉地も葉子の心持ちは刺青をされるように自分の胸に感じて行くらしかった。やや程経ってから倉地は無感情のような鈍い声でいい出した。
「全くはおれが悪かったのかもしれない。一時は全く金には弱り込んだ。しかしおれは早や世の中の底潮にもぐり込んだ人間だと思うと度胸がすわってしまいおった。毒も皿も食ってくれよう、そう思って(倉地はあたりをはばかるようにさらに声を落とした)やり出した仕事があの組合の事よ。水先案内のやつらはくわしい海図を自分で作って持っとる。要塞地の様子も玄人以上ださ。それを集めにかかってみた。思うようには行かんが、食うだけの金は余るほど出る」
葉子は思わずぎょっとして息気がつまった。近ごろ怪しげな外国人が倉地の所に出入りするのも心当たりになった。