Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あるおんな

或る女

有島 武郎

Lesen Sie 或る女 (あるおんな) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 205.655 Zeichen · 406 Bildschirme

Aozora Bunko

葉子は自分一人の手でそんな事をしてやりたいような愛着と神聖さとを貞世に感じながら看護婦を手伝った。

「貞ちゃん……さ、氷嚢を取りかえますからね……」

とやさしくいうと、囈言をいい続けていながらやはり貞世はそれまで眠っていたらしく、痛々しいまで大きくなった目を開いて、まじまじと意外な人でも見るように葉子を見るのだった。

「おねえ様なの……いつ帰って来たの。おかあ様がさっきいらしってよ……いやおねえ様、病院いや帰る帰る……おかあ様おかあ様(そういってきょろきょろとあたりを見回しながら)帰らしてちょうだいよう。お家に早く、おかあ様のいるお家に早く……」

葉子は思わず毛孔が一本一本逆立つほどの寒気を感じた。かつて母という言葉もいわなかった貞世の口から思いもかけずこんな事を聞くと、その部屋のどこかにぼんやり立っている母が感ぜられるように思えた。その母の所に貞世は行きたがってあせっている。なんという深いあさましい骨肉の執着だろう。

看護婦が行ってしまうとまた病室の中はしんとなってしまった。なんともいえず可憐な澄んだ音を立てて水たまりに落ちる雨だれの音はなお絶え間なく聞こえ続けていた。