Japanische Klassiker mit Furigana
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あるおんな
或る女
有島 武郎
Lesen Sie 或る女 (あるおんな) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 205.655 Zeichen · 406 Bildschirme
……葉子はもうそんな境界が来てしまったように考えて、だれとでもその喜びをわかちたく思った。で、椅子にかけたまま右後ろを向いて見ると、床板の上に三畳畳を敷いた部屋の一隅に愛子がたわいもなくすやすやと眠っていた。うるさがるので貞世には蚊帳をつってなかったが、愛子の所には小さな白い西洋蚊帳がつってあった。その細かい目を通して見る愛子の顔は人形のように整って美しかった。その愛子をこれまで憎み通しに憎み、疑い通しに疑っていたのが、不思議を通り越して、奇怪な事にさえ思われた。葉子はにこにこしながら立って行って蚊帳のそばによって、
「愛さん……愛さん」
そうかなり大きな声で呼びかけた。ゆうべおそく枕についた愛子はやがてようやく睡そうに大きな目を静かに開いて、姉が枕もとにいるのに気がつくと、寝すごしでもしたと思ったのか、あわてるように半身を起こして、そっと葉子をぬすみ見るようにした。日ごろならばそんな挙動をすぐ疳癪の種にする葉子も、その朝ばかりはかわいそうなくらいに思っていた。
「愛さんお喜び、貞ちゃんの熱がとうとう七度台に下がってよ。ちょっと起きて来てごらん、それはいい顔をして寝ているから……静かにね」