Japanische Klassiker mit Furigana
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あるしょうじょのしまで
或る少女の死まで 他二篇
室生 犀星
Lesen Sie 或る少女の死まで 他二篇 (あるしょうじょのしまで) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.554 Zeichen · 228 Bildschirme
若い芸者などはよく縁の有無を判断してもらいに来た。父は、どんな人にも口数をきかなかった。要領だけ言っていつも奥へ這入ることが多かった。
そのころから十年前に寺の庫裏から失火して、屋根へ火がぬけたことがあった。まだ宵のくちであったから、火はすぐに揉み消すことが出来た。けれどもあとで気がつくと父の姿が見えなかった。捜すと父は本堂の護摩壇で槃若経を誦んでいた。目撃した人は、「あの小さいお上人さんがまるで鐘のような声でお経をよんでいたのは本当に凄かった。」とあとで言っていた。
「お前お茶をあがらんか。」
父は私の読書している室へ呼びに来ることがあった。寂しいほど静かな午後になると、そういう父も寂しそうにしていた。
「え。ごちそうになります。」
父の室へはいると相変らず釜鳴りがしていた。父はだまって茶をいれて服ませた。それに羊羹などが添えられてあった。父は草花がすきで茶棚には季節の花がいつも挿されてあった。
「お前も早く成人しなければいかん。」
などと時折に言った。
私は父の顔を凝視するごとに、この父もきっと世を去るときがあるにちがいない。それも近いうちにあるにちがいないという観念をもった。