Japanische Klassiker mit Furigana
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あるしょうじょのしまで
或る少女の死まで 他二篇
室生 犀星
Lesen Sie 或る少女の死まで 他二篇 (あるしょうじょのしまで) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.554 Zeichen · 228 Bildschirme
」と言った。
「どういたしまして。」
私は自分の室へかえった。
朝のおそい私はおひると一しょの食事をしているとき、彼女はよく、大きな高い、女の子供らしいはね上るような声で、
「かあさん。ただいま。」と言って、縁側に本をつつんである包みを投げ出すのが、毎日のように私の室にきこえてきた。そんなとき時計をもたない私はちょうど午後一時ころにあたるのを何時も知るのであった。
よく庭で弟と遊んでいる声が聞えた。
私はあの事件以後、めったに外へ出ることがなかった。ことに家の込み合った町の有様や、小さな酒場やカッフェを見るごとに、私は自分の心に痛みをかんじた。まるで犯罪者のように室にばかり籠って、創作に苦しんだり古い日記の整理などをしてくらしていた。
ときには、表へ出て通りを眺めることもあった。ことに寺の多い谷中のこととて、晩方、涼しい風に送られてよく上野の寛永寺の時鐘がきこえた。しずかな夕方など、都会の騒音にまぎれない、しめやかさをふくんだ音色は、よくきき得られた。
彼女は弟と、も一人の男の子とで、庭のところで石をたたいては鐘の音を読んでいたりした。
……いま鳴るかねは、いくつのかねじゃ、六つのかねじゃ……とお国のうたらしいのを、少女らしいあどけない、どこか鋭い哀切な調子でうたっていた。