Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 185.353 Zeichen · 371 Bildschirme
「茶なと一つ」
と、いった。
そして、自分の掌へも小さい茶碗を受けて、舐めるように、茶をすすっている。そのほかに何の心もないように、幾口にも味わっている。
「お客どの」
「は」
「蘭はお好きでありませんか。春蘭もよいが、秋蘭もなかなかよい」
「蘭……? 蘭と申すと」
「蘭の花ですよ。これから三、四里も山の深くへはいると、断崖絶壁に、太古の露をふくんだ蘭があります。それを下僕の小熊に採らせて、一鉢、移してみましたが――お眼にかけましょうか」
「い、いや」
あわてて藤吉郎は止めた。
「無用です。てまえには」
「ホ。左様かな」
「生来の武骨者で」
「武骨なれば、なおさら稀には、蘭の一花にでも対して、静かに慰められたがおよろしかろう」
「――と、思うこともないではござらぬが、家にあっても、夢は戦野を駈けているくらいに、自分はまだ少壮血気です。織田家の微臣に過ぎません。そういう閑人の気もちは理解いたしかねる」
「いや、そうか。無理もないこと。――だが其許のような人間を、そう齷齪と、功利に疲らせて、御自身勿体ないと思わぬかな。――山中人の人生にも、なかなか深い意義もある。どうでござる、洲股など捨てて、其許も、この山へ一庵をむすんで引き移って参られぬか」