Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 185.353 Zeichen · 371 Bildschirme
桔梗咲く
……もとより携えておる将軍家の御書は、信長様のお手以外、何人にも、間接にはお渡しいたすことは相成りませんが」
と、前提して、まず自分の立場を明らかにするために、明智城をすてて美濃から越前へ落ちて行った当時からのことを、彼らしい静かなことばと、明晰な筋みちを追って、順々とはなしだした。
桔梗咲く
ここ十年の余、光秀は、つぶさに世の辛酸をなめて来た。
元来が知識人で、机上の学問にのみ囚われやすかった彼も、
(生きた修行をした)
と、今となれば、与えられた逆境に感謝しているものの、その間の流浪、困窮の時代は、ずいぶん長かった。
弘治の美濃の内乱に、父祖以来の明智城も火中に失って、従兄弟の弥平治光春と、ふたりきりで越前へ落ちて行ったものである。そこの穴馬在では、数年の間、蟄伏したまま、素姓の知れない一牢人として、百姓の子に読書習字など教えて細々に暮していた。
(いつまで、こうしていても)
と、その後、呼び迎えた妻とも相談して、身一つで、諸国の遍歴に出た。
(よい主もあらば。よい機会もあれば)
と、世に出る道を求めながら、一方には、他日に備えるための兵学者的な眼をもって、国々の士気や経済や城塁などを視て歩いた。