Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.903 Zeichen · 400 Bildschirme
「やすめ」
次右衛門光忠は、光秀の旨をつたえて人馬に令した。
光秀も馬を降り、床几を取りよせて、しばらくこの嶺のいただきに休息した。昼ならばここから一眸になし得る京洛の町々も、特徴のある堂塔や大きな河をのぞいては、ただ全市の輪郭が闇の底おぼろに望まれるだけだった。
「四方田又兵衛はまだ追いついて来ておらぬか」
側にいる四方田政孝にたずねたのである。が、その甥の行く先は、政孝こそ、光秀へ問いたいことであった。
「昨夜から見えませぬが、殿より何かお使いを命ぜられたのではございませんか」
「そうだ」
「どこへ参りましたので」
「やがて分ろう。――もし戻って見えたら、歩行中でもかまわぬから、すぐわしの馬側へよこしてくれ」
「畏りました」
政孝はふかく訊ねなかった。何事にも御腹蔵のない主君が口に出したくないことなら触れないのが道であると考えたからである。
口をつぐむと、光秀のひとみはまた、墨のような京洛の屋根を、飽かずに眺めていた。夜霧の流れが濃くなり淡くなるせいか、それとも夜眼の馴れてくるためだろうか、次第にそこの建物なども判別されて来る。わけて二条城の白壁はほかの何物よりも明らかだった。