Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.903 Zeichen · 400 Bildschirme
それらのものと鼓譟する軍馬のひびきで、一瞬、京都の空はぐわうと鳴るような思いがあった。
けれど、市民の狼狽はせつなの寸間だけで、堂上やしきも一般民家も事態を知った直後には、却って、寝しずまっていた前よりも、ひっそりとしてしまった。もちろん人っ子ひとり往来をあるく影もない。
外はまだなお、ようやく咫尺に人顔の見わけがつく程度であったから、妙覚寺へ向った第二軍は、べつの小路から迂回した味方の影を敵と疑ったり、また部将が、
「号令のあるまでは撃つな」
と、かたく戒めても、辻の曲り角へ来ると、気の逆上っている卒は、忽ちパチパチと霧の中を銃を盲射し始めていた。
硝煙を嗅ぐと、なおさら彼らの気はそぞろに猛り紊れた。この状態は、何度戦場を踏んだ卒でも、捨身になりきれるまでの間には、どうしても一度は通る気持だった。
「おっ、彼方で貝や鉦が聞える。――始まったぞ、本能寺の方は」
「やっているな」
「やっているっ」
彼らは自分の足が地についているかいないかも覚えなかった。駈けつつもまだこんな声が誰の口からともなく衝いて出るほど前面に何の抵抗も現われていないのに、満身の毛穴はそそけ立ち、その鳥肌になった顔や手に冷たい霧があたって知覚もないようなここちであった。