Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.903 Zeichen · 400 Bildschirme
といっても、昨日の午頃までの情勢しか彼にも分らないので、その範囲にとどまるものであったが、昨日以来、ひたすら本国岡崎さして、道のみ急いでいた家康にとっては、それだけでも、大体の全貌を知る上に、よほど明瞭な判断を持つことができた。
次の間まで住持が来ていた。
人々はそれを知ると口をつぐんだ。家康はふり向いて、
「調うたか」
と訊ねた。
住持は答えて、
「御案内申しあげまする」
と促した。
家康は住持について起ちながら、みなも来い、と云った。何か先にいいつけておいたことがあるらしい。康政も忠勝も四郎次郎も従って行った。そこはこの田舎寺の小さい本堂であった。
「外におる忠次や直政もこれへ呼べ」
家康のことばに、寺の附近を警備していた酒井忠次や井伊直政なども席に列した。仰ぐと、この藪寺のいぶせき厨子に昼の燈明が白々ゆらいで見える。そして壇の正面に右大臣織田信長の俗名を誌した紙位牌が置かれてあった。
(さては仮に御弔いをなされる思し召か)
家臣たちは家康の心を察し、また世の変転を観じながら、ひそと坐っていた。
住持が型のような礼拝を行ったあとで、家康は香炉の前へすすんで久しいあいだ合掌した。