Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 176.911 Zeichen · 353 Bildschirme
二つの世
ひとは皆、秀吉はいま、大坂城にいるものとのみ思っていた。
が、彼は、江州の坂本にいた。
家康が信雄と清洲で会見していた三月の十三日も、秀吉の身は――その坂本にあったのである。秀吉らしくもない立ちおくれ――という形がないでもない。
家康は、すでに立って、万端、後図の策も終り、浜松――岡崎――清洲と、着々、予定の進出を捗ってきているのに、従来、疾風迅雷の早仕事ではしばしば世におどろかれてきた秀吉たるものが、なぜか、こんどは出脚がにぶい。――いやにぶく見える。
「たれか来いっ。おおい子ども。おらぬか。鍋丸も、於六もおらぬのか」
主人の声である。例によって大きい。
わざと、遠くひかえていた小姓部屋の面々は、ソラ起きたと顔見あわせ、こっそりやっていた双六をあわてて片づけた。そのまに、十四歳の鍋丸が、しきりと手が鳴りぬく主人の部屋へ素ばやく走り出して行った。
この小姓部屋もいつのまにかみな顔がちがってきた。かつての加藤於虎、福島於市、脇坂甚内、片桐助作、平野権平、大谷平馬、石田佐吉などのいわゆる子飼の子どもたちも、いまは悉く二十四、五から三十近い若者となり、殊に賤ヶ嶽このかたは、各※(二の字点、1-2-22)、二千石三千石を加増され、馬をもち土地をもち家来を持って、それぞれここを巣立ちしていた。