Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 176.911 Zeichen · 353 Bildschirme
家康も、微笑して、
「しばし、伏せい」
と、小姓へいった。
金扇の馬簾が、ゆらりゆらり、そこから少し山蔭へかくされた頃――仏ヶ根の山腹から裾にかけて、井伊兵部直政の赤一色の旗さし物や人数が、岩間岩間を山つつじの花が染めるように、展開していた。
「おう、きょうは井伊が先鋒か」
「赤備えが、前へ出たぞ」
「眼にこそ、あざやか。だが、働きはどうだろう」
敵も、味方も、そういった。
部将の兵部直政。ことし二十四歳。家康が秘蔵の若者とはたれも知るところ。
つい、今朝までは、旗本のうちに、伍していたのであるが、日ごろ、使える男と見ておいた家康が、
「きょうこそ、思いのまま、そちの性根を出してみい」
といって、手勢三千人をさずけ、きょうの、最名誉であり、また最苦難でもある、先鋒に立たせたのであった。
しかし、何分、若いので、
「老巧の言も聞けよ」
と内藤四郎左と高木主人の、ふたりをつけてやった。
田ノ尻にある池田紀伊守と三左衛門輝政の兄弟は、その南高地から、赤備えをながめて、
「あの強がッておる赤隊の出鼻をたたけ」
と、山あいの側面から二、三百の一群と、真正面から約一千の正攻隊を押し出して、まず、ドドドッと、鉄砲の火ぶたを切った。