Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 176.911 Zeichen · 353 Bildschirme
大久保七郎右衛門の息子――新十郎忠隣だった。まだよい敵に会わないで、今朝から不遇をかこっていたかれは、せっかく、目ざす敵に近づいたとき、あぶみを踏みはずして、落馬しかけた。
「しまった」
と、あせるところへ、また、うしろから退いて来た池田方の一武者が、新十郎のよろいの揚巻を目がけて槍を突きさした。
槍は、わずかに、皮膚をかすって外れたが、新十郎は、泥田の中へ、ころげ落ちた。
ざッと、泥水が、かれの全姿へも、敵の顔へも、刎ねかかった。逃げ退いて来た敵ではあるが、その男、すこぶる磊落者とみえ、突然、わははははと、泥だらけな顔をくずして笑った。そして、田の中の新十郎にむかい、
「おい、小せがれ。汝のような乳くさい青武者の首をとっても荷物になるだけのことだ。首の代りに、逃げるに欲しいこの馬をもらってまいるぞ。――いつか、この馬で、おれがまた戦場へ出たら、取り返すがいい」
と、新十郎の馬へ飛び乗り、ふりむいて、また一笑を与えたまま、さっそうと、駈け去った。
新十郎は、這い上がって、歯がみをかんだが、ふとみると、その敵も、あわてていたか、さきに自分を突きそこねた槍を、地上におき捨てていた。