Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 176.911 Zeichen · 353 Bildschirme
正信は、家康が幼時、質子として、今川家に養われていた頃から仕えていたほど、生え抜きの三河武士であったが、長島一揆の際、勘気をうけて、以来、十八年のあいだ諸州を浪々していたものである。そして去年、本能寺変の直後、家康が堺の旅行中からあわてて国許へ引っ返す途中、その急に駈けつけて、危難の道を払い、無事浜松へ守って来たことによって、実に十九年ぶりの帰参がかなえられたのであった。
「羽柴どのの気を遣うのが、殿にお分りのようでは、殿にも、少々、お心をつかわれておられますな」
その正信も、家康に似て、どこという特徴も見えない、平凡なる侍だったが、年は主人より四ツ上だし、多年、世間をひろくあるいて、家康とはちがう苦労をなめているので、おのずからな人間の錆味が、彼には、古天妙の釜肌のように自然身についていた。
正信の帰参以来、彼と家康とは、よく主従二人きりで、こうして地味に、話すことをただ楽しむ如く話していることがあった。
憎くもなく、恨みもふくまず、十八年間も別れていた幼少からの主従が、ふたたび盆に返って、水魚のような君臣の情契を新たにしたことなので、往時の追懐だけでも、尽きないものがあるのであろう。