Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 176.911 Zeichen · 353 Bildschirme

Aozora Bunko

みな、今日の盛運に遭わず、家康の成人も見ず、この国の逆境中に、敢えなく先だった老臣ばかりである。

帯刀も、その功臣中の一名の子だった。

――が、年は家康よりずっと上なので、その子すらもう髪に初老の霜を見せている。

「帯刀。……何を見ておる?」

「はあ」

と、帯刀は初めて、にやりとしながら、

「御書物が、いつも変らないので、不審に眺めておりました」

「これか……」

と、家康は書見台に眼を落して、

「書は同じでも、心は折々にちがう。従って、読み得る所も、時により同じではない。――たとえば、中庸にせよ、論語にせよ、二十歳代に読んだのと、三十代、四十代になって読むのとでは、大いな差がある。……また、書物は、そのようにして、一生読める書でなくば、真実の書とは申されまい」

「ははあ。そういうものでございますかな」

いったい、退屈を慰めに来たのやら、退屈を催させに来たのやら、気の知れない帯刀ではある。

「…………」

また、黙ってしまう。

家康も、黙然といる。

瀟々、外の雨声ばかりで、寒室の燭は、油も凍るか、いとど火色も細い。火の気といっては、家康の側に、手炉一つあるきりだった。