Japanische Klassiker mit Furigana
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めいじびじんでん
新編 近代美人伝 (上)
長谷川 時雨
Lesen Sie 新編 近代美人伝 (上) (めいじびじんでん) von 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.076 Zeichen · 256 Bildschirme
暗い寒い静かな明方に、誰れも気づかぬとき、床の間の寒牡丹が崩れ散ったような彼女の死の瞬間が想像され、死顔を見るに堪えなくなって暇を告げた。
秋田さんは玄関まで連立って来ながら、
「あすこへね、あすこから卓と椅子を持っていって、赤い紐で縊れたのです。ちゃんと椅子を蹴ったのですね息をのんだと見えて口を閉じていたし、それは綺麗な珍らしい死方だそうです」
こういうおりに送り出されるのは忌むのが風習ではあるけれど、話しながら送りだされてしまった。
私は道を歩きながら彼女に逢ったおりの印象を思いうかべていた。舞台外では幾度と逢ったのではないが、いつでもあの人はキョトンとした鳩のような目附きで私の顔を眺めていた。文芸協会の生徒の時分もそうであったし、芸術座の女王、女優界の第一人者となってからもそうであった。貞奴が引退興行のときおなじように招かれて落ち合ったおり、野暮なおつくりではあるが立派な衣裳になった彼女は飾りけのないよい夫人であった。田村俊子さんが、
「何故挨拶しないのよ。だまって顔ばかり見ていてさ。一体知っているの知らないの」
こう言っても、やっぱり丸い眼をして――舞台で見るのとはまるで違う、生彩のない無邪気な眼をむけて、だまって、度外れた時分にちょいと首を傾げて挨拶とお詫とをかねたこっくりをした。