Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

」

と、千鶴子は指輪の銀の彫刻を撫でつつ小声で云った。

「大丈夫ですよ。」

と矢代は云ったものの、千鶴子のそう思うのもあながち無理なことではないと思った。

「でも、そうだわ。こんなことって、一人にいつまでも赦されると思えないんですもの。」

矢代は笑いにまぎらせてまた星を見詰めた。冷たい空気に混り乾草の匂いがどこからか漂って来た。千鶴子はっと立ち上ると矢代には黙って外へ出ていった。

星は見る間に落ちて来そうな輝きを一つずつ放っていた。矢代は煙草を吸い終ると、戻りの遅い千鶴子の後から部屋を出て探してみた。しかし、彼女はどこにもいなかった。暫く左右の丘の上を探しているうちに、氷河の見える暗い丘の端で、じっとお祈りをしている膝ついた彼女の姿が眼についた。カソリックの千鶴子だとは前から矢代は知っていたが、いま眼の前で祈っている静かなその姿を見ていると、夜空に連なった山山の姿の中に打ち重なり、神厳な寒気に矢代もひき緊められて煙草を捨てた。

千鶴子の祈っている間矢代は空の星を仰いでいた。心は古代に遡ぼる憂愁に満ちて来て、山上に立っている自分の位置もだんだん彼は忘れて来るのであった。