Japanische Klassiker mit Furigana
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ひめくり
日めくり
壺井 栄
Lesen Sie 日めくり (ひめくり) von 壺井 栄 (つぼいさかえ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.884 Zeichen · 34 Bildschirme
二
それどころか、苦痛と衰弱は加わるばかりらしい。
「もう、うちへ帰れないような気がする――」
そんなことまでいい出した彼に、
「なに、いってんの。私でさえもよくなって帰ったのに、若いあんたが、馬鹿なこといいなさんな」
その「私」もごく最近まで同じこの病院に病を養っていたのである。
二
「出向いて行っても、なんの役にも立ちはしないけんど」
「それでも、病人にとっちゃあ顔みるだけで、うれしいかもしれないわ。私らにはあいたがっているっていうから」
「しかしなあ、顔みりゃ見たで、彼もいろいろと、辛いんじゃないか。おれはそう思う」
「私も、そうは思うけど」
「だれにも会いたくないとは云っても、さてだれも見舞ってくれないとなると、さびしかろうしな」
「だから、私らだけでも、いってやらなくちゃあ」
夫婦がそんな問答を交しているところへ、ある知人から花が届けられてきた。病人へではなく、小説書きの老妻の方へであった。花は高貴な蘭である。なんという名の蘭か知らぬが、ハワイから飛行機でとり寄せるのだという。年老いた妻は、時折このぜいたくな花を同じ人から贈られる。そこらの花屋では見かけることもない花を、彼女はいつも、とてつもなく喜んで仕事部屋に飾った。