Japanische Klassiker mit Furigana
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ぎじんのすがた
日本の怪談
田中 貢太郎
Lesen Sie 日本の怪談 (ぎじんのすがた) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 56.030 Zeichen · 115 Bildschirme
五
老婆はそれを聞くと考え深そうな眼つきをして頷いた。
「それじゃ、やっぱり狐だ、傷をしたから、もうおっかながって来ないかも判りませんよ」
「そうかなあ」
新一は老婆に短刀を抜いて見せなどして二人で暫く話しあっていたが、もう寝ることにして老婆一人でお滝の傍へ往って見た。お滝は夜着に顔を埋めて泣きじゃくりしていた。
五
ろくろく睡りもせずに夜の明けるのを待ちかねていた新一は、往来で馬の嘶く声や人の話声がしだすと寝床を出て庖厨の戸を開けた。夜はもうきれいに明けて庭には露がしっとりとおりていた。新一は怪しい獣の落した血の痕はないかと思ってそのあたりを見廻ったが、それらしい物は見えなかった。
そこへ老婆も起きて来て、新一といっしょになって見廻ったが、べつにそんなものも見えなかった。で、老婆はその後でまだ開けてない雨戸をすっかり開けてからまた見廻ったが、やはり何も見えなかった。
「やっばり何もないのですね」
老婆は新一に短刀を持って来さして念のために改めてみた。短刀には微黒いものが乾き附いていた。
「たしかにこれは血だがなあ」
新一の耳には短刀を投げた時に怪しいものの発した声が残っていた。