Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme
後から見える横顔、房々した髪、女らしい首筋、細そりとしかも豊かな肩、そんなものを眺めてはお新に思い比べて見た。山本さんは彼女の形の好い前髪だの、優(やさ)しい頬(ほお)だのを、仮令(たとい)その人がそこに居ないまでも、想像で見ることが出来た。
他人の睦まじさを眺めると、余計に山本さんはそう思って来た。何故九年前には、もっともっと堅く彼女を抱締めなかったろう。何故遠くの方でばかり眺めて置いたろう。彼女が学校を卒業して、未だ何処へ嫁(かたづ)くとも定(き)まらなかった時、何故結婚を申込まなかったろう。
こんなことを考えては、旅舎へ戻って来た。彼は今度の帰朝に、支那から相応の貯蓄を持って来ていた。何に費(つか)っても可(い)いような金が二百円ばかりあった。彼女の為とあらば、錯々(せっせ)と働いて得た報酬も惜しくない。どうかしてその金を費おうと思った。
妹の療治は案外手間取れた。病院の寝台(ねだい)の上に仰(あおむ)きに成ったきり、流血の止るまでは身動きすることも出来なかった。お新は親戚の家から毎日のように見舞に出掛けた。終(しまい)にはお牧の方で気の毒がって、彼女に関わずに置いてくれと言うように成った。