Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きゅうぶんにほんばし

旧聞日本橋

長谷川 時雨

Lesen Sie 旧聞日本橋 (きゅうぶんにほんばし) von 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 158.045 Zeichen · 322 Bildschirme

Aozora Bunko

という調子で、丁寧に手をついてお礼をいうのと、深切な焼きかたなので一人では手が廻りきれないほど売れだした。

あまり皺のない、大きな顔に不似合なほど謙遜した、黒子のような眼で焼き方を吟味し、ものものしい襷がけの、戸板の上の、道ばたのおせんべやの、無愛想なのも愛嬌になったのかも知れない。すると、おなじ難渋をしていた姉娘が一日手伝いに来て見ていて、翌日からすぐ隣りあって、おなじ戸板の店を出した。もうその時は、はじめの縁に、遠州で仲人になった旗本――藤木前の朝散の太夫の子か孫かが婿で、その若い二人組だった。お客がくると、湯川氏の奥方がお辞儀をしているうちに、

「いらっしゃい、こちらが焼けていますよ。」

といったふうに浚ってゆく。客は売れるから焼手をふやしたおなじ店だと思っている。老奥方のお辞儀は段々ふえて、売れ高はグングン減ってゆくが、そんな事に頓着のない老媼は隣店の売行きを感嘆して眺め、ホクホクしていう。

「お前さん方、もっと此方へお出なすったらよい。どうも私の店がお邪魔なようだ。」

全くお邪魔だといわれたかどうか、とにかく元祖戸板せんべいの店は取りかたづけられた。