Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はるいくたび

春いくたび

山本 周五郎

Lesen Sie 春いくたび (はるいくたび) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 70.094 Zeichen · 142 Bildschirme

Aozora Bunko

梟谷の奥に住む土生一族の娘にすぎないお糸も、よく考えてみれば天子様の民である。その心さえあればお国のために立派な働きの出来る体なのだ。いな! 天子様とお国のためにこそ、働かなければならぬのだ。

それでこそはじめて日本人といえるのだ。

――ああ、あたしはまちがっていた。

お糸は大きく眼をみはった。

外では人々のさわがしいどよめきが聞える、どうやら後援隊が着いていっしょに出発する様子である。武器のふれあう音や馬のいななく声が聞えてくる。

――ああいけない、行ってはいけない、屏風岩には爆薬がしかけてあるんです。

お糸はくるおしく叫んだ。しかし手足をしばられ、猿轡をはめられている身にはそれを知らせるすべがなかった。――そのうちに出発の命令が聞えた。

「第三隊前へ、――銃隊つづけ」

そして勇ましい足音がおこった。

お糸は土間の方へずり出して行った。五百人の命はいまお糸の手ににぎられていると同じである、もしそのまま進軍して行ったら、五十貫ずつ、五か所にうずめてある爆薬のために、屏風岩がくずれて五百名は生埋めになるのだ。

――待って下さい、待って※(感嘆符二つ、1-8-75)