Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はるいくたび

春いくたび

山本 周五郎

Lesen Sie 春いくたび (はるいくたび) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 70.094 Zeichen · 142 Bildschirme

Aozora Bunko

「これでよい、これを持ってお帰りなさい」

もとどおり紐をむすんで差出しながら、

「せっかくのお骨折にもお礼をすることができません、しかしこの御恩は終生忘れませんよ。……それから取りまぎれてうかがわなかったが、お名前を聞かせてください」

「はい、伝堂ゆきと申します」

「――伝堂、……おゆきどの、――」

「ただ今では茶店をいたしておりますけれど、以前は郷士で父は久右衛門と申します」

伊兵衛は急にあっとひくく叫んだ。そしてしばらくはおゆきの面を茫然と見まもっていたが、やがて驚きをしずめながらいった。

「もしや、あなたに兄さんが……」

「あります、ありますわ」

おゆきも思わず膝をすり寄せた。「甲太郎と申しますの。五年以前ゆくえ知れずになりましたが、御存じでございますの?」

「――奇縁だ」伊兵衛はうめくようにいった。

「知っています、知っていますとも。伝堂甲太郎は拙者の親友です。京ではいま尊王志士のあいだになくてはならぬ人物として活躍していますよ。――故郷に久右衛門という父とおゆきという妹がいると、いつか聞いたのを覚えていました。あなただったのですね」

「まあ……兄さまが」