Japanische Klassiker mit Furigana
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ますおとし
枡落し
山本 周五郎
Lesen Sie 枡落し (ますおとし) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.765 Zeichen · 67 Bildschirme
――それでもあたし、もう生きているのがいやになったのよ、おうめは泣きだしながら云った。これまでだって、人並に生きたような日はいちんちもなかった、あたしもうたくさんよ。
――ここを出てゆくのよ、とおみきは仕事を続けながら静かな口ぶりで云った。引越しをするの、知っている者のいない土地なら、いやな思いをすることもないでしょ。
――だって人別は付いてまわるでしょ、それに仕事のほうはどうなるの。
――むずかしいわね、おみきは娘にではなく、独り言のように云った。むずかしいけれど、二人で死ぬことに比べれば、やってみる値打はあるでしょう、あたしすぐ差配さんに相談してみるわ。
差配の吉兵衛は首をひねった。というのは、それまでに三度おみきは町奉行所へ呼び出された、町役と家主が付添いで、二度は与力の吟味だったが、三度めには壱岐守とかいう町奉行がしらべに当り、おみきを叱りつけた。それほど激しい口ぶりではなかったけれども、はっきりした言葉でおみきを責め、叱りつけた。――差配は家主からそのことを聞いていたので、移転させていいものかどうか迷ったらしい。だが、家主や町役に事情を語り、行先さえはっきりしていればよかろう、ということになり、十月のはじめに、この浅草猿屋町へ移って来たのであった。