Japanische Klassiker mit Furigana
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ますおとし
枡落し
山本 周五郎
Lesen Sie 枡落し (ますおとし) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.765 Zeichen · 67 Bildschirme
五
五
「わけはわからなかったが、それからおれは用心するようになった」と芳造は続けた、「もう男はいっちまったろうと思って帰っても、うちの外に立って、中のようすをよくよく慥かめてからでなければ、うちの中へははいらないようにした」
蜆売りは相変らず続けていた。それで、うちへかよって来るその男が、川崎の宿の、飯盛り女郎を多く置くので有名な、「越中屋」という大きな宿屋の主人であることがわかった。名は勝兵衛、女ぐせの悪い性分で、いつもよそに妾を囲って置くが、続くのはせいぜい半年か一年。ちょっと飽きがくれば、なさけ用捨なしに棄ててしまう、ということであった。
「おれは恥ずかしさで、道をあるくのにさえ顔もあげられなくなった」と芳造は云った、「としは九つだったが、飯盛り女郎とか妾とか、囲われ者とかいう言葉のもつ、世間の軽侮や嘲笑の意味は、おぼろげながら知っていたからだ、おれはおふくろをけがらわしいと思った、おふくろもおふくろのいる家も、そのまわりの田や畑や、草原や畦道までがけがらわしくなった、そしておれはうちへ帰ることはできないと思い、そのままとびだしちまった」
目的はなかった。