Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ますおとし

枡落し

山本 周五郎

Lesen Sie 枡落し (ますおとし) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.765 Zeichen · 67 Bildschirme

Aozora Bunko

七

わけを話せば伊予巴でも貸しては呉れるだろう、けれども五両という金はむりだ。

「とてもむりだ」とおみきはまた呟いた、「二両くらいでもいいと云った、そのくらいならすぐにでも出せるけれど」

けれどと呟いておみきは眼をつむった。裏の長屋のほうで、なにか大声でどなりあう男たちの声が聞えた。酔って暴れているのか、それとも喧嘩でもしているのか、はなれているのでよく聞きとれなかったが、その声を聞いているうちに、おみきはやがて眠ってしまった。

七

おうめは仕立物の針をはこばせながら、芳っさんから聞いた話はこれでぜんぶよ、と云った。

「可哀そうにね」とおみきはぼんやりと云った、「でも世間には、もっと悲しい育ちかたをした者も、少なくはないのよ」

母の気持がうわのそらだということに、おうめはまだ気がつかなかった。

「おっ母さんがあたしたちのことで心配しているのを、芳っさんはまえから知ってたんですって」とおうめは続けた、「けれどね、おっ母さんたちとは二つだけ、まったく違うところがあるというのよ」

祖父が亡くなるまで、母は世間知らず、苦労知らずに育ち、祖父の云うままに結婚した。しかし自分たちはどちらも苦労して育ち、世間の荒く冷たい、用捨のない波風にもまれてきた。