Japanische Klassiker mit Furigana
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ますおとし
枡落し
山本 周五郎
Lesen Sie 枡落し (ますおとし) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.765 Zeichen · 67 Bildschirme
「聞いていたわよ」とおみきは力のない、だるそうな口ぶりで云った、「でもね、それにはいまむずかしいことが起こってるの、おまえは芳っさんが好きなようだし、芳っさんはいい人だと思うわ、それには心配はないと思うんだけれど」
「ほかになにか、都合の悪いことでもあるの」
「そうせっつかないでおくれ」おみきは云った、「おっ母さんにはいま、考えなければならないことがあるのよ」
おうめは訝しげに眉をひそめた、「――おっ母さん、それどういうことなの」
「ああ、いいんだよ」おみきは急にわれに返ったように、頬笑みながらかぶりを振った、「いいんだよ、おまえとはかかわりのないことなんだから」
「なにがかかわりのない、ことなの」
「せっつかないでおくれって云ったでしょ、芳っさんがお店を持つまでには、少なくとも二年はかかる、とか云ってたそうじゃないの」
「でもなにかむずかしいことがあるって」
「だから」おみきはそっぽを向きながら、強い調子で云った、「それはあんたの知ったことじゃないっていうのよ、たのむからうるさくしないでちょうだい」
おうめは息を詰めて母を見た、母の口ぶりがこれまでになく強く、きっぱりとしていたからである。