Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
しかしそれは今更思い悩んでも始まらぬことであった。小屋を出てすぐ歩き出さねばならない。危険が迫っている。かり立てられるような気持の半面、何か図太いものが身体の芯をじっと掴んではなさなかった。
善いにしろ悪いにしろ、と彼は立ったままぼんやり考えた。独楽のように、力尽きてたおれるまでは一所懸命廻っていなければならぬ!
突然、跫音が聞えた。びくっとして宇治は身構えた。
表の小屋の間を縫い、跫音は横手の濡れた地面に廻って来るらしい。宇治は注意深く耳をすましながら、右手で拳銃の銃把を握り、安全装置を外した。此処らは特に林相が深いので、梢洩る光線も海底のように青かった。空気を押し分けるように暗い人影があらわれて来た。宇治は驚いたような声を立てた。
「高城、ではないか」
宇治はしかし拳銃を握ったまま警戒の姿勢を動かさなかった。だんだん近づいて来る。高城伍長であった。宇治が立つ床のへりの直ぐそばに来て立ち止った。そして宇治を見上げた。宇治は黙って高城を見下していた。もともと色の白い高城の顔が、光線の具合で青く透き通るようだった。宇治を見上げたその長い切れ眼に、涙がいっぱいたたえられているのを宇治ははっきり見た。