Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
五郎は盃をあけながら答えた。
「わたしはこの一箇月余り、一つ部屋の中に閉じこもっていた。一歩も外に出なかったんだよ。いや、出なかったんじゃなく、出られなかったんだ」
「なぜ?」
丹尾はきつい眼付きになった。
「なぜって、そうなっているんだ。二階だったし――」
病室は二階にあったし、窓の外にはヒマラヤ杉がそびえて、外界をさえぎっていた。別に逃げ出す気持も理由もなかった。友人のはからいで、初めは個室に入ったが、入った日から睡眠治療が始まったらしい。日に三回、白い散薬を服まされる。三日目に回診に来た医師が、五郎に聞いた。
「気分はどうですか。落着きましたか?」
「いいえ」
と五郎は答えた。
「まだ治療は始めないんですか?」
まだ憂欝と悲哀の情緒が、彼の中に続いていた。牙をむいて、闘いを求めていた。情緒が彼に闘いを求めているのか、彼が闘いを求めているのか、明らかでなかった。その状況を半年ほど前から、五郎は気付いていた。ある友人と碁を打っている時、急に気分が悪くなった。何とも言えないイヤな気分になり、痙攣のようなものが、しきりに顔面を走る。それでも彼はしばらく我慢して、石をおろしていた。