Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
丹尾はきっとした眼で、五郎を見た。
「火口を一巡りして、自分がどんな気持になるか、知りたいだけですよ。二万円でそれが判れば、安いもんだ」
「そうか。そうか」
五郎は合点合点をした。
「ではここで待っているよ」
丹尾は彼に背を向け、歩き出した。火口の左に進路を取る。五郎は弁当の残りを食べながら、その後姿を見ていた。
〈あいつ、弁当の残りを詰めて行ったが、トランクもろとも飛び込むつもりかな〉
後姿がだんだん小さくなって行く。動悸がし始めたので、彼はあわてて弁当を捨て、小瓶の酒を飲む。掌に汗が滲んで来た。
五郎の視野の中で、もう丹尾の姿は豆粒ほどになっている。突然それが立ちどまる。火口をのぞいているらしい。また歩き出す。
五郎は小高い場所からかけ降りた。あいつが死ねるものかという気分と、死ぬかも知れないという危懼が交錯して、五郎をいらいらさせている。火口の縁に、有料の望遠鏡がある。五郎はそれに取りついて、十円玉を入れる。もう丹尾は半分近くを廻っている。
無気味なほど鮮やかな火口壁が、いきなり眼に飛び込んで来た。五郎は用心深く仰角を上げる。二度三度左右に動かし、やっと丹尾の姿をとらえる。