Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
居住区に入ると、奥に吉良兵曹長が腰をおろしていた。片手に軍刀を支え、湯呑みから何かのんでいた。アルコールに水を割ったものらしかった。かすかにその匂いがした。
「焼いてしまったか」
「もう、すみました」
私は手に持った上衣を寝台にかけ、卓の方に近づいた。
「兵隊」
衣嚢の整理をしていたらしい兵隊が、急いで吉良兵曹長のところに来た。
「暗号室に行ってな、今日の御放送の電報が来ていないか聞いて来い」
兵は敬礼をすると、急ぎ足で壕を出て行った。他に兵は誰も居なかった。壕内は、私と兵曹長だけだった。皆、相変らず穴掘りに行ったのらしかった。私は吉良兵曹長に向き合って腰かけた。吉良兵曹長は例の眼で私を見返した。しゃがれた声で言った。
「いよいよ上陸して来るぞ。村上兵曹」
「今日の放送が、それですか」
「それは、判らん。此の二三日、敵情の動きがない。大規模の作戦を企んでいる証拠だ。覚悟は出来ているだろうな」
嘲けるような笑い声を立てた。
「もし、上陸して来れば――此の部隊はどうなりますか」
「勿論、大挙出動する」
「いや、特攻隊は別にして、残った設営の兵や通信科は」
俄かに不機嫌な表情になって、私の顔を見て、湯呑みをぐっと飲みほした。