Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme

Aozora Bunko

――

「村上兵曹。この木箱も燃しますか」

「うん。燃してしまえ」

木箱は音を立ててこわされ、次々に投げ込まれた。新しい材料を得て、焔は飴のように粘っこく燃え上った。何気なく手をポケットに入れた。何かがさがさした小さなものが手指に触れた。つかんで、取り出した。一昨昨日捕えたつくつく法師の死骸であった。すっかり乾いていて、羽は片方もげていた。私の掌の上で転がすと、がさがさと鳴った。他の者に見られないようにそっと、私はそれを火の中に投げこんだ。燃え焦れた暗号書の灰の中に、それは見えなくなった。

死ぬ瞬間、人間は自分の一生のことを全部憶い出すとか、肉体は死んでも脳髄は数秒間生きていて劇烈な苦痛を味わっているとか、死んだこともない人間によって作られた伝説は、果して本当であろうか。見張の男の死貌はまことにおだやかであったけれども、人間のあらゆる秘密を解き得て死んで行った者の貌ではなかった。平凡な、もはや兵隊でない市井人の死貌であった。私が抱き起したとき見た、着ている服の襟の汚れを、何故か私はしみじみ憶い出していた。――

夕方になって、暗号書は燃え尽きた。灰をたたいて、燃え残りがないかを確かめて、私等は戻って来た。