Japanische Klassiker mit Furigana
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ごくらく
極楽
菊池 寛
Lesen Sie 極楽 (ごくらく) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.532 Zeichen · 14 Bildschirme
その声に応ずるように御姿だけは幾度拝んだか分らない阿弥陀如来が忽然として、咫尺の間に出現し給うた。おかんは、御仏に手を取られて夫宗兵衛の坐って居る蓮の台へと導かれた。おかんは、絶えて久しい夫の姿を見ると、わっ! と嬉し泣きに泣きながら縋り付いた。が、不思議に、宗兵衛は余り嬉しそうな顔をしなかった。『お前も来たのか』と云うような表情をしながら座を滑っておかんの為に半座を分けて呉れただけである。
それでも、おかんは落着くと、夫と死に別れてから後の一部始終を話した。当代の宗兵衛が、家業に精を出す事やら嫁のお文が自分に親切にして呉れたことやら、孫娘が可愛くて/\堪らなかったことなどを、クド/\話し続けた。そうして娑婆の話が何日となく続いた。一家の中の話は、幾度も繰り返した。知人や親類の事も幾度も話した。祇園や京極の変遷なども話した。伽陵頻迦が微妙音に歌って居る空の下で、おかんは積る話を、心のまゝにした。宗兵衛も面白そうに聞いて居た。が、幾日も/\話して居る中には、大抵の話は尽きてしまった。おかんは、話が絶えてしまうと初て落着いて、極楽の風物を心から楽しもうとした。