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Japanische Klassiker mit Furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 167.285 Zeichen · 330 Bildschirme

Aozora Bunko

そして彼もそこを去った。

綱宗は夫人に眼くばせをした。夫人は立って、銚子を取り、甲斐に酌をした。甲斐はべつにおどろいたようすもなく、静かに礼をして、その酒を飲んだ。

「重ねろ」と綱宗が云った、「このまえ、上府したらすぐに来ると申したのに、今日まで来なかった罰だ、今宵は酔わせるぞ」

甲斐は黙って会釈をし、云われるままに、夫人の酌でゆっくりと、盃を重ねた。

「今日までどうして来なかった」と綱宗は云った。

多用とは云わせない、本郷あたりの隠宅へ、しばしば、数日も保養にゆくということを聞いている。どうしてここへは来なかったのか、と綱宗は云った。

甲斐は静かに答えた、「御承知でないかと存じますが、さきごろから家中に事が多く、江戸番の老職はみな多忙で、ことに私は新任でございますから、なかなか伺候するいとまもございませんでした」

「隠宅へはまいってもか」

「身の保養も御奉公の一つでございます」

「よし、もっと飲め」と綱宗は自分を抑えるように云った、「隠宅のことについては周防(茂庭)から聞いている、そこがどのように使われているかは、周防から聞いてよくわかった、しかし、そう聞くまではおのれと思っていたぞ」