Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 167.285 Zeichen · 330 Bildschirme
茱萸の実
――颯爽たるものだな。
という声が聞えた。
――颯爽たるものだ、七十郎、いい気持らしいな。
それは七十郎の頭のなかで、冷笑するように聞え、その声の主の顔までが見えた。その声は原田甲斐宗輔の声であり、その顔はなごやかな、しかし皮肉な、微笑をうかべていた。七十郎は恥ずかしさのあまり嚇となった。
「原田ごときがなんだ」と七十郎は思わず云った、「あのくわせ者が、――」
伊助という若者はびくっとし、脇から、おそるおそる彼の顔を見ていた。川の瀬音が高く、河鹿の声が一つだけ、まをおいて、ときに低く、ときに音を張って、聞えて来た。七十郎は強く頭を振った。いま見えた人物の幻像を、うち消そうとでもするように。それから酒を呷って、呟いた。
「くわせ者め」
茱萸の実
帯刀は話しをやめて、じっと宇乃の横顔を見まもった。彼は原田家の嗣子で、年は十七歳になる。父の甲斐には似ていない、おそらく母親似なのであろう。色が白く、おもながで、眉が濃く、澄んだいい眼をしている。幼名は采女といい、ずっと病身であったが、十五歳のとき元服し、帯刀宗誠となのるようになってから、眼に見えて背丈も伸びたし健康にもなった。