Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 167.285 Zeichen · 330 Bildschirme
刃がにぶい光をとばし、甲斐はうしろへ躱しながら、左手を振った。案内の侍が狼藉者と喚き、久馬が割ってはいろうとした。甲斐はそれを、彼も自分に襲いかかるものと思ったらしい。大きく跳躍して、男の隠れていた竹藪の中へと、とびこんだ。
「待て、ばかなまねをするな」と玄察がどなった。
男は竹藪の中へ、甲斐を追いつめた。甲斐は望岳亭の地理をまったく知らない、案内の侍は狼藉者と叫びながら、却って、甲斐の所在を知らせるように、提灯をかかげて、竹藪の中へ走りこんで来た。
「成瀬、人を呼んで来い」と玄察が云った。
甲斐は竹藪の中で、男と相対した。どう逃げたらいいかわからないし、ほかにも助勢者がいるかと思った。だが抜合わせてはならない。彼は竹の幹を盾に、相手の刃を避けることだけ考えていた。
――国許の人間だな。
と甲斐は思った。
走りこんで来た案内の侍の、さしだす提灯が、横から光を投げ、男の顔が浮きあがって見えた。男は刀を構えたまま、右へまわって、颯ととびかかった。
玄察の叫び声が聞え、甲斐は左へ逃げた。追いつめる男の刀が、二度、甲斐の袴と、袖とを刺し、男の荒い呼吸が、はっきりと甲斐に聞きとれた。