Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 167.285 Zeichen · 330 Bildschirme
そうだろう」
七兵衛は口をあいたままで、とび出すほど大きく眼をみはり、右手では反射的に、脇に置いてある刀をつかんだ。
「そうだろう七兵衛」と七十郎は続けた、「きさまは兵部に命ぜられて、罪の有無もわからない浪人者を斬ろうとした、きさまは罪の有無を知らなかった、ただ兵部の言葉を信じ、兵部の命にしたがって斬ろうとした、坂本、畑ら四人もそうだ、きさまは相手の罪科を知らず、自分には斬る理由もなく、他の煽動に乗ってすぐに人を斬る、こういう人間を屠殺者というのだ、渡辺七兵衛、きさまそれでも屠殺者ではないか」
七兵衛は無礼者と叫び、刀を、左手に持ち変えながら立った。蚊いぶしをしていた宿の者は、二人とも、仰天して脇へとびのき、七十郎は静かに立ちあがった。東の遠い山の上に月が出ていて、川波が光り、せせらぎの音の中に、河鹿の声が一つだけ聞えた。七十郎は眼の隅で、万右衛門が刀の柄に手をかけるのを見ながら、自分は左手に刀をさげたまま、七兵衛に向かって、抜くまえに考えろ、と云った。
「兵部邸の外であったことを忘れるな、あのときおれが声をかけなかったら、きさまはあの浪人に斬られていたぞ」