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Japanische Klassiker mit Furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 167.285 Zeichen · 330 Bildschirme

Aozora Bunko

「もうおやすみ」と甲斐は静かに手を放し、掛け夜具の衿を直してやった。おくみは甲斐の眼をみつめながら、おうれしくはないんですか、と訊いた。甲斐は微笑して、わからないねと答えた。

「こういうことには、男はいつも戸惑いをするものだ、うれしいかどうか、すぐにはわからないものだよ」

おくみの眼が安堵の色でやわらいだ。甲斐の微笑と、唇のあいだから覗いた、白い、きれいな歯を見て、気持がおちついたらしい。母親がわが子を眺めるような眼で、甲斐を見て、男の子と、女の子と、どちらがお望みかと訊いた。

「女の子なら、おくみに似るだろうね」と甲斐は云った、「おやすみ、私は向うへゆくよ」

「あとでいらしって」

「今夜は丹三郎といてやると云ったろう」

「では朝になってから」

甲斐は頷き、もういちどおやすみと云って、立ちあがった。

灯を暗くし、屏風をまわしていると、襖の向うで、「お支度ができました」と云う女中の声がした。甲斐はおくみの顔を見て、それから、静かに出ていった。

居間に使っている八帖に、夜具を並べて、甲斐と丹三郎は横になった。同じ座敷で、甲斐と夜具を並べて寝る、ということは、丹三郎には思いがけなくもあり、不安を感じたようでさえあった。