Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 167.285 Zeichen · 330 Bildschirme
と十左は声をひそめた、「七十郎、きさま御家臣に召し出されるぞ」
「突拍子なことを云うな」
「七十郎は御家臣に召し出される、家禄は五百石、これでも石巻へ遊びにゆくか」
「遊びではない保養だ」しかしと云って、七十郎はふいに立停り、振返って、十左の顔を見た、「いまの話しは事実か」
「おれが嘘を云う人間か」
「この七十郎が、――御家臣に召し出される」
「もういちど云うが、家禄は五百石だ」
七十郎は相手の顔をじっと見まもった。そうして、そのままで低く、囁くように、一ノ関かと訊いた。十左は頷いて、一ノ関だと答えた。七十郎は歩きだした。ゆっくりと、やや暫く黙って歩き、それから、ふん、と鼻を鳴らした。
「おれを縛るつもりだな」と彼は呟いた、「野放しでは手が付けられない、領内に住んではいるが、一粒の扶持も貰っていない郷士だ、天下の法に触れない限り、取って押えることはできない、これがもし家臣なら、邪魔だと思えばどうにでも片づけることができる、そこで召し出しというわけか」
「或いは懐柔するこんたんかもしれぬぞ」
「いや、いや違う」と七十郎は頭を振った、「一ノ関は単純な男だ、単純で性急だ、おまけにこのおれを、懐柔するほどの人間とみてはいない、彼の目的は邪魔者を除く手段ということだけだ」